私たちの「老後」はいつから始まるのでしょうか。
老後とは文字通り、老いた後の生活のことですが、
もしかしたら自分が「老いた」と認識しなければ、
老後はずっとやってこないのかもしれません。
面白いことに「ここからが老いです」という医学的根拠も基準も、
実はないのだそうです。日本人の平均寿命は80歳を超え、
女性の2人に1人は90歳より長く生きる時代になりました。
長生きできるのは喜ばしいことですが、
一方で、健康寿命について語られることも多くなりました。
健康寿命とは、日常生活が健康上の問題で制限されることなく
自立して暮らせる期間のこと。
男性では平均寿命より9年短く、女性は12年も短いそうです。
晩年に病気や老化によって自立した生活ができなくなり、
施設に入居する高齢者が年々増え続けているのです。
慣れ親しんだ家、家族との思い出がたくさん詰まった家を離れるのは、
とても心が痛みます。大きな不安だってあるはずです。
けれど毎年多くの高齢者がそうせざるをえないのは、
家づくりを生業としてきた我々にも責任の一端があるように思えてなりません。
人は60歳から目が見えにくくなり、65歳から足腰が弱くなってくるそうです。
私たちが人である以上、肉体的な衰えからは逃げられません。
けれども、もし家が人の老いと向き合い、支え補う役目を担えたら、
最後まで自分の家で暮らせる人が増えるかもしれない。
オーナー様の心身の状態に合わせて、いちばん生活しやすい家を一緒につくっていけたら、
オーナー様は誇りある豊かな人生を全うできるかもしれない。
むしろ「100年住宅」「50年保証」といったうたい文句を掲げるのなら、
人が老いた後の生活にも当然目が向けられ、それを踏まえた設計や設備が、
あらかじめ十分に施されているべきではないでしょうか。
それが本来の自然な家づくりではないでしょうか。
我々は、家づくりの本質とは何か、
人生と家の関係は本来どうあるべきかを真摯に捉え、
まっすぐに「人の老いと向き合う家」をつくろうと決めました。
それがはしもとの家の出発点となりました。